客室でつくり手と出会い、直接対話しながら工芸品を購入できる――。普段のくらしにも馴染みやすい伝統工芸品がホテルの客室に並べられ、一年に一度だけの見本市会場になるホテル カンラ 京都。「伝統工芸=昔のもの」ではなく、あくまで普段の暮らしの延長線にある工芸を伝えたい。そんな想いではじまった「Kyoto Craft Exhibition DIALOGUE*」は今年で9回目を迎えました。つくり手と対話しながら自分で見て感じることができる機会を紡いできた、ホテル カンラ 京都が考えるDIALOGUEの楽しみ方とは。
客室でつくり手と出会うことの価値
様々な工芸の産地である京都を舞台に、作り手が直接自分たちのものづくりの魅力を伝えるDIALOGUE。今年は過去最多の88ブランドが集結し、作品の展示販売はもちろん、トークイベントや食とのコラボレーションなど、五感で工芸に触れることのできる4日間となりました。本館の全38室の客室は、足を一歩踏み入れれば普段の客室とは違う、つくり手の個性が散りばめられた展示会場へ。

館内は、間口が狭く奥行きが長い京都の伝統的な町家をイメージしてつくられている。訪れる人は部屋の奥へ奥へと進んでいくにつれ、次にどんな展示が広がるのかという期待が膨らむ。靴を脱いで部屋に上がることで見る人の気持ちが解け、つくり手との会話のハードルが下がり、より深い会話が生まれていたのが印象的だった。

ベッドやテーブル、畳、浴室といった生活空間を使ったユニークな展示は、客室であることを忘れてしまうようなインスタレーション。見る人に驚きを与えながらも、住空間に近いことで利用シーンを想像でき、思わず手に取りたくなるような五感に訴えかける仕掛けになっていた。
イベント期間中には日本の絹織物の服づくりを追ったドキュメンタリー映画『森を織る。』が別邸ファンクションルームにて上映され、サブ会場のFab Cafeではお茶会やアーティストトークも連日開催。ホテルの空間を超えて「DIALOGUE」が活発に行われた4日間だった。
洛を感じる空間の中、五感で味わう
DIALOGUEの楽しみは客室の展示だけではない。毎年、ホテル カンラ 京都のレストランではイベントオリジナルメニューを特別に食べることができ、出展する作家さんや参加者の楽しみのひとつになっている。
京都の旬の食材や国産黒毛和牛をメインに、 全国各地からの厳選食材を鉄板料理で提供するのが本館地下1階の「鉄板料理 花六」。通常はディナーのみだが、今回のイベントではそのお料理のクオリティはそのままに、より気軽に体験できた。

提供されたのは「鉄板焼き 黒毛和牛100%バーガー」。バンズとパティは目の前の鉄板で焼き上げられ、香ばしさとともに仕上がっていく様子も楽しめるのはカウンター席ならでは。
付け合わせには、同じく鉄板で丁寧に火入れされた旬の野菜と、素材の旨みを引き出すための煎り酒ソース、テリヤキソース、バーニャカウダの3種とともに提供される。シンプルな調理ながら素材の個性が際立ち、味の変化を楽しめる一皿だった。

本館地下2階のダイニング「THE KITCHEN KANRA」では、すべてのメニューに薪窯を使うこだわりよう。薪窯で火入れすることでいちごの甘みを凝縮したタルト、京都の食文化を象徴する白味噌がアクセントのパンナコッタなど、京都の食文化を取り入れた薪窯料理の数々に多くの方が舌鼓を打っていた。

それぞれの料理を引き立てる器にもカンラならではのこだわりが。鉄板料理 花六の器に使われていたのは、過去にDIALOGUEにも出店していた阪本 修さんの金属をイメージした漆塗りの木製プレート。重厚感あふれるその見た目とは裏腹に、木製ならではの軽い使い心地は、日々の暮らしでも扱いやすく、工芸をより身近に感じられるような作品だ。THE KITCHEN KANRAの器には、京都・東山に窯元を構える洸春窯の高島 慎一さんの器が使われていた。料理をより華やかに見せる鮮やかな色彩や、一つひとつ手作業で作られる「いっちん」と呼ばれる細かな装飾など、工芸の温かみを食事を通して感じることができた。
ホテル カンラ 京都が考える、これからの伝統工芸とDIALOGUE
京都をはじめ、日本の伝統産業は(*1)1970年代から90年代はじめをピークに、ものづくりに関わる企業数や生産額が大きく減少している。そんな中でも、日本の美意識やデザインが改めて評価され、海外でメイドインニッポンの魅力を知る機会も増えてきた。
京都では、西陣織や京友禅、清水焼といった伝統工芸がリデザインされ、現代のライフスタイルに呼応するように枠を越えたコラボレーションも活発に行われている。
ホテル カンラ 京都では開業以来、そうした動きに触れられる接点をつくり、展示やイベントを通して工芸の新たな可能性を提案している。

2015年に始まったDIALOGUE(*2)は、出展者の応募は年々増加し、若手や中堅のつくり手からの提案が増えているそう。伝統を受け継ぎながらも現代の暮らしに寄り添う工芸との出会いは、今年も多くの来場者の関心を集めていた。
(*1)参考:~伝統産業の未来を切り拓くために~京都市伝統産業活性化検討委員会提言
(*2)Kyoto Craft EXhibition DIALOGUE:ホテル カンラ 京都の客室やレストランを展示会場とする、工芸や手仕事の作り手を紹介する展示販売イベント。2027年3月の開催は、10回目の節目を迎える。全国各地から多様な背景を持ったものづくりに取り組む出展者を2026年9月1日(火)より募集がスタート。詳細はこちら
