まちの風土やカルチャーと出会う旅の映像記録「PROLOGUE」。
今回は「HOTEL ANTEROOM KYOTO」を起点に、ユニークなショップやギャラリーを巡ります。伝統を守りつつ、新しいアイデアで変化し続ける京都の“今”を映像で描きます。
京都には、日本に来てから旅行で何度か訪れる機会がありました。
まちの規模はそれほど大きくありませんが、その落ち着いた雰囲気が好きで、訪れるたびに京都らしい空気を楽しんでいました。一方で、何度か足を運ぶうちに、有名な場所はひと通り見てきたのではと感じていたのも正直なところです。そんな中、第2章を京都で撮ることになりました。もう一度このまちを歩いたら、何か新しい景色に出会えるだろうか。そんな気持ちでカメラを持って歩き始めました。
今回特に印象に残ったのは、京都のクリエイティブな一面です。伝統を大切にしながら、新しい表現やものづくりに挑戦する人たちのエネルギーがまちに自然と溶け込み、撮りたい瞬間が次々と生まれていました。歴史ある古都としての京都だけでなく、今も新しい文化や表現が生まれ続けるまちとしての京都。少し視点を変えて歩くことで見えてくる、新しい表情を感じてもらえたらうれしいです。
Editor’s note – 編集ノート –
古さを活かし、新しさを育む
京都には、古い建物が数多く残っているという印象がありました。でも実際に歩いてみると、その多くが新しい役割を持ちながら、今も大切に使われていることに気付きました。
訪れたARTROやTAKIは、どちらも歴史ある蔵を活かした空間です。建物の個性をそのまま残しながら、カフェやギャラリー、地域の人が集まる場所として新しい時間が流れ、その発想や、古いものと新しいものが自然に調和していました。
特に印象に残ったのは、VOU Galleryです。高い天井からやわらかな自然光が差し込み、室内でも心地よく撮影ができる空間でした。自然光がつくるやさしい空気感のおかげで、その場所ならではの雰囲気を素直に映像に残せた気がします。
建物を新しくつくり変えるのではなく、歴史や記憶を受け継ぎながら新しい価値を生み出していく。その向き合い方もまた、このまちの魅力のひとつなのだと感じました。

迷い込む裏路地
映像や写真を撮るとき、僕は構図や奥行き、そして整いすぎない美しいバランスをいつも意識しています。京都の路地には、そのすべてが自然にありました。
まっすぐ伸びる道がつくる心地よい遠近感や、静かな対称性。その一方で、角を曲がるたびに思いがけない景色や小さなお店に出会えるのも、このまちならではの魅力です。
どこまでも歩いてみたくなる路地が、京都にはたくさんありました。限られた時間では、とても歩ききれないほど。それでも、そのひとつひとつとの出会いが、このまちをより印象深いものにしてくれたように感じています。

餃子が先か、お湯が先か
京都を歩いていると、時々「なんでこうなったんだろう?」と思うような場所に出会います。
このまちの面白さは、古いものを残すだけじゃなくて、全く違うアイデアを自然に組み合わせてしまうところだな、と感じるきっかけが多いところ。
映像でも紹介した餃子屋さん。そこは「夷川餃子なかじま」という餃子のお店なんですが、実はその奥にはサウナとお風呂があります。最初に聞いた時は、「え、なんで餃子屋さんにサウナ?」と思いました。餃子とサウナって、あまり関係があるようには見えません。
でも、考えてみると、すべてに分かりやすい理由やつながりが必要なわけではないのかもしれません。実際に聞いてみると、オーナーの一人がただ大のサウナ好きだったそうです。意外と理由はシンプル。でも、その「好き」という気持ちがあったからこそ、普通なら思いつかない組み合わせが生まれた。何かを始める時に、最初から完璧な答えを探す必要はないのかもしれません。好きという気持ちから自然に生まれるアイデアにも、人を惹きつける力があるのだと感じました。

名前のないラーメン屋
ランチの撮影では、これまで紹介してきた場所と同じように、空間の使い方や発想によって、新しい価値を生み出している場所を撮りたいと思っていました。
そこで訪れたのが、名前のないラーメン屋。
看板があるわけでもなく、地図を見ても目立つ場所ではありません。地下のフロアにひっそりとあり、入り口を見ても、そこがラーメン屋だとはすぐには分からないほどでした。 でも中に入ると、景色は大きく変わります。店内には小さな庭があり、外と内の境界が自然に曖昧になっていました。 いただいた和牛ラーメンもとても美味しく、そこに添えられた色鮮やかな野菜が、料理だけでなく撮影する空間にも良いアクセントを加えてくれました。
ここもまた、限られた場所の可能性を新しい形で引き出している、京都らしい場所のひとつだと感じました。

静かに咲くものたち
天気にも恵まれ、この日は時間をかけて京都のまちを歩きながら、いろいろな場所を見て回ることができました。そんな中で特に目に留まったのが、まちのいたるところにある小さな植物や鉢でした。
小さな器に丁寧に植えられた盆栽や、さりげなく置かれた植物。どれも決して目立とうとしているわけではありません。ただそこに静かに存在していて、少し控えめなのに、不思議と美しさを感じるものばかりでした。歩きながら、できるだけ多くの種類を探すようにしました。こうした小さなディテールが、最終的な映像の流れやリズムを作る上で、大切な要素になると思ったからです。
そして、まちのあちこちで静かに育っている小さな植物たちと、京都の路地裏で生まれている新しいクリエイティブな動きには、どこか似たものがあるように思いました。どちらも大きな声で主張するわけではない。でも、気づけばそこに存在していて、少しずつ周りの空気を変えていく。

京都の夜
友人から、「クラブメトロ」という場所について話を聞いたことがありました。そこでは、音楽だけではなく、さまざまな表現やイベントが生まれていると。実際に訪れてみると、会場はかなり暗く、パフォーマンスも光や影、色を巧みに使ったものでした。
その暗さや限られた空間によって演者との距離が近く感じられ、会場全体に独特の親密な空気が生まれていました。空間の中を自由に動きながら表現するパフォーマーたち。その姿を追いかけているうちに、最後のギター演奏が特に印象に残りました。
本編に残す予定ではなかったのですが、純粋に「もっと見ていたい」と思える瞬間だったので、少し長めに残すことにしました。
入場料も驚くほど手頃で、京都に戻ってくることがあれば、また違う表現に出会いに訪れたいと思える場所でした。古いものと新しいもの。静けさと刺激的な表現。相反するようなものが自然に共存している。そのバランスに、今回の「京都らしい」面白さを感じました。

これは新しい京都らしさかも
今回感じた「京都らしさ」について考えていると、HOTEL ANTEROOM KYOTOにたどり着きました。
今回泊まったのは、アーティスト宇加治志帆さんによるコンセプトルーム。部屋に入った瞬間、そこは作品や色で満たされた、まったく違う空間でした。部屋の中を歩きながら、細かな部分を探していく時間が本当に楽しかったです。
そして、入り口にあるGALLERY 9.5も印象的でした。ホテルの中にギャラリーがあるだけではなく、京都のアートシーンや地域のクリエイティブな活動と自然につながっている。その考え方がすごく面白いと思いました。ロビーにあるショップスペースを眺めながら過ごす時間も楽しくて、ただ泊まるだけではなく、その場所全体を楽しめるホテルでした。朝食も、健康的でありながらしっかり美味しく、最後まで気持ちよく過ごすことができました。
そして、このホテル自体も、もともとは学生寮だった建物を生まれ変わらせたものです。京都を歩いていると、古いものをただ残すのではなく、そこから新しいものを生み出そうとしている場所が本当に多いことに気付きます。過去の記憶を残しながら、新しい視点やアイデアを重ねていく。その姿勢こそが、今回僕が感じた京都らしい面白さでした。

Kyoto SPOT
1.ARTRO
〒604-8126 京都府京都市中京区貝屋町556
2.VOU / 棒
〒600-8061 京都府京都市下京区筋屋町137
3.名前のないラーメン屋
〒604-8005 京都府京都市中京区恵比須町534−31 木屋町ビル B1 CEO
4.夷川餃子なかじま 団栗店
〒605-0806 京都府京都市東山区六軒町206−1 どんぐり会館 1階
5.TAKI/焚
〒604-8805 京都府京都市中京区壬生馬場町30−29
6.クラブメトロ
〒606-8396 京都府京都市左京区下堤町82 BF
7.HOTEL ANTEROOM KYOTO
〒601-8044 京都府京都市南区東九条明田町7
Story writer / Lorenzo
